講師プロフィール


料理研究家  吉田 礼子

    1953年、宮城県に生まれる。

宮城学院(中・高)、東北学院大学文学部(史学科民俗学専攻) 

25歳時、理研圧力鍋料理コンテスト入賞等

児玉料理教室、児玉久美子氏に師事 し、同教室の助手を経験

平成20年 吉田料理教室 開校

全国料理学校協会師範  NPO日本食育インストラクター協会1級

書道 師範  書道教室(30年)  条幅の部 宮城県知事賞 (図南書道会)

 

私が幼い頃、昭和30年代前半はまさにストーブや羽釜でご飯を炊く時代でした。

昔は大家族で一升の米を炊くのはそう珍しいことではありませんでした。しかし小学生の私にとって、一升の米を研ぐのは少々難儀なことでした。少しでも母の助けになればという気持ちと、早く一人前にご飯を炊ける様にと背伸びした気持ちも手伝って挑戦したものの、思った以上に水は冷たく釜が重かったのを覚えています。ジャッジャという米の擦れる音はリズミカルで心地よく、又母の傍で見たり教えてもらうことは楽しい時間でした。何度も水を取り替えたり、米粒が一粒も手からこぼれ落ちないように静かに水を捨てたり、研ぐことだけでも気を付けなければならないことでいっぱいでした。水ごりは中指の一節半、又は米の上に手を乗せ、手のくるぶしまでと教えられ、母がまるで学校の先生みたいに物知りで、私にとっては格好良い憧れの存在に思えました。

現在、私はお料理教室の中で、鍋で炊くご飯を大切にしています。とくに小学生のクラスでは、米の研ぎ方から炊きあがるまでを丁寧に教えています。ピチッと閉まる蓋がある鍋で炊くご飯は本当においしい。瑞穂の国に生まれ育った私たち、ご飯を炊く事は私達の原点といっても過言ではありません。蓋をしたままの鍋の中で起きている変化を知ることによって、五感を鍛える。鍋の中のブクブク泡立つ音に耳を傾け、湯気が蓋からもれるその強さ、勢いを目で見、いい匂いを鼻で訊き、米粒を手のひらで感じ、口で甘さ、香ばしさを感じ、当に五感で味わう。その幸せを次世代へ伝えるのも昭和に生まれた者の一人として大切な事だと思います。                                                                                                                                                                                                  ( 常陽新聞掲載 )

 

 

2011年3月に起きた震災でライフラインが途絶え、復旧するまで、皆、大変な苦労があったが、「鍋でご飯が炊けてよかった、習っていて良かった」という話を何人からも聞くことができ本当に良かったと思い、私も”鍋で炊くご飯”をこれからも大切に取り組んでいきたいと思っています。